1月30日、潜伏先の沖縄県宮古島市で渡辺剛容疑者(43)が、死体遺棄容疑で逮捕された。渡辺容疑者は昨年12月7日、スイス在住で11月末に一時帰国していたファンドマネジャー・霜見誠氏(51)と妻の美重さん(48)を、架空の「福山雅治のパーティー」をうたって誘い出し、首を絞めて殺害。前もって知人に購入させていた埼玉県久喜市内の空き地に遺体を埋めたとみられている。

 しかし、殺害された霜見氏は中東のドバイを舞台にした投資トラブルでも、東京地裁に民事訴訟を起こされている。裁判資料によると、この話に登場するのは闇社会にも太い人脈を持つといわれる実業家のY氏(2009年1月に死去)と、その「愛人」と指摘される女性S氏。

 Y氏は自らが実質的なオーナーとなり、ドバイで不動産投資や株式投資を行うB社を経営していた。ところがY氏の死去と前後して、和歌山県に住む資産家男性からの5千万円の投資をめぐってトラブルとなり、S氏と霜見氏が被告となって損害賠償請求を起こされているのである。訴状で霜見氏は、「Yオーナーのマネーロンダリングに加担していた者である」と指摘されている。原告側関係者の男性が説明する。

「霜見氏はY氏の指示で、5千万円の一部を出資者の資産家男性に無断で別の会社の口座に移すなどの操作を行っていた。顧客の資産家男性とトラブルになった後も、『自分は顧客であるY氏の指示に従っただけ』と、悪びれる様子もなかった。その一方で、Y氏にも株をすすめて、損をさせていたこともあったようです」。この裁判で、霜見氏は1月下旬に出廷する予定だったという。

 Y氏をめぐる人間関係では、こんな証言も出てきた。「08年ごろ、Y氏がドバイに進出してくる日本人として『日鯨の渡辺』という名前を何度か口にしていた」(Y氏に近かった人物)。

週刊朝日 2013年2月15日号