その頃、僕は報道特番に取りかかっていた。2014年、『花はどこへ行った』のプロテストフォーク歌手ピート・シーガーが亡くなり、安倍政権による安保法案が閣議決定されるという。「反戦」というくくりで二つの出来事を結び付けようと目論む企画を持ちかけると近藤さんは「わかった」と、ピート・シーガーの吹き替えとして関西弁のだみ声で出演、強烈なインパクトを与えた。
この番組『野に咲く花は、少女の胸に』はギャラクシー賞選奨と日本民間放送連盟賞ラジオ教養番組部門優秀賞をダブル受賞し、お祝いの席に近藤さんも駆けつけ、「ラジオって面白いなぁ」。
その一言が忘れられない。近藤等則さん、これまでありがとうございました。天国でも思いっきりフリージャズを!
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2020年11月13日号