新型コロナウイルス感染症の後遺症は本誌9月7日号でも紹介したように、7月ごろからイタリアやフランス、中国などの病院から報告されるようになった。10月には、国内で治療の中心的な役割を担う国立国際医療研究センターの研究チームが、入院していた感染者約60人の退院後の体調について電話で調査した結果を発表した。

 海外からの報告でも多かった呼吸苦や疲労感、嗅覚障害を訴える人が多かった。

 新型コロナウイルスの後遺症の実態調査を行う厚生労働省の研究班の代表、横山彰仁・高知大学教授によると、呼吸苦など、肺の機能低下と関係する後遺症は、

「ウイルスを攻撃しようとして免疫細胞から分泌されるサイトカイン(生理活性物質)が過剰に出て、呼吸するのに重要な役割を担っている肺が損傷するのが原因で起こると考えられる」

 という。また、新型コロナウイルスに特徴的な後遺症として指摘されていた血の塊が血管内にできる「塞栓症(そくせんしょう)」や心筋症などについて、横山さんはこう指摘する。

「感染後2カ月以上経っても、心筋が損傷を受けた時に出るたんぱく質が通常よりも多く出ていた人や、MRI検査で心臓に異常が見つかった人が調査対象の7割にのぼる、という報告がイタリアやドイツから出ている。原因はまだ不明だが、心臓・血管系の障害は、当初、想定されていた以上に多くの人に起きている可能性がある」

■ストレスの影響大きい

 一方、パリ大学などの医師たちが9月に発表した調査では、後遺症の一つとして脱毛も報告された。感染から平均110日後、約280人のうち2割が脱毛があると答えたという。国立国際医療研究センターの報告でも脱毛を訴える人が同程度いた。

 なぜ新型コロナウイルスに感染して脱毛が生じるのだろうか。

 脱毛症に詳しい杏林大学の大山学教授(皮膚科)によると、新型コロナウイルスに限らず体力を大きく消耗したり、心身に大きなストレスがかかったりした人の脱毛は珍しくないという。インフルエンザやEBウイルスなどによる発熱を伴う急性感染症の後にも、脱毛が激しくなることがある。また、大きな手術や交通事故、出産の後にも脱毛が生じることがある。

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