また、認知症の人は、一人で部屋にいると落ち着かなくなります。そんなとき、階下に下りてきて、誰かに温かく声をかけられることで会話が生まれると、自分が悩んでいたことや「どこかに行かなければ」という強迫観念が消えてしまうものです。建物の中で、無理やり人と会話することが増えるよう、設計や運営に組み込んでいます。

 高齢者住宅を地域に開放しています。特に近所の子どもたちが遊びに来たいと思ってもらえるような空間を作っています。

 駄菓子屋を開いたり、本を貸し出したり。子どもたちは、必ずしも高齢者と話しているわけではありません。子どもたち同士で勝手に遊んだり、宿題をしたり、プレゼント交換をしたりしている。高齢者は、いつもその光景を見ていて、いつのまにか一緒に話している。関係性は自然に生まれています。

 17年からは「VR認知症プロジェクト」を始めました。VR(仮想現実)で当事者が見えている世界、感じている世界、例えば、「送迎バスを降りるとき、どうして躊躇(ちゅうちょ)するか」「幻視はどのように見えるか」などを体験してもらいます。認知症の人の気持ちを想像する力を持つことが映画に対する一つの答えになればと考えます。

映画「PLAN75」(2022年6月公開、早川千絵監督) 社会保障費が政府の財政を圧迫し、少子化と超高齢化が同時に進み、働き手が高齢者を支えきれず医療保険と介護保険が破綻寸前になった。そこで、国が「プラン75」という、75歳以上には自らの最期を選ぶ権利を認め、その意思を支援する制度を始めた近未来を描く。 78歳の主人公・角谷ミチ(倍賞千恵子)は夫と死別し、仕事をしながら一人で暮らしてきた。しかし、友人を亡くし、職場を追われ、家も失うことに。失意の中、次第に「プラン75」に引き込まれ、申請する。制度を支えるために働く若手と当事者の高齢者は、それぞれどのように考えて生きていくかをリアリティーあるフィクションで描く。(2月17日からPrime Videoで独占配信)(c)2022『PLAN75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
映画「PLAN75」(2022年6月公開、早川千絵監督) 社会保障費が政府の財政を圧迫し、少子化と超高齢化が同時に進み、働き手が高齢者を支えきれず医療保険と介護保険が破綻寸前になった。そこで、国が「プラン75」という、75歳以上には自らの最期を選ぶ権利を認め、その意思を支援する制度を始めた近未来を描く。 78歳の主人公・角谷ミチ(倍賞千恵子)は夫と死別し、仕事をしながら一人で暮らしてきた。しかし、友人を亡くし、職場を追われ、家も失うことに。失意の中、次第に「プラン75」に引き込まれ、申請する。制度を支えるために働く若手と当事者の高齢者は、それぞれどのように考えて生きていくかをリアリティーあるフィクションで描く。(2月17日からPrime Videoで独占配信)(c)2022『PLAN75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

(医療ジャーナリスト/介護福祉士・福原麻希)

週刊朝日  2023年2月10日号

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