昨夏の竹島騒動以来、メディアのとりあげ方が減り、冷え込んだと言われる日本の“韓流”熱。しかし、1月29日に行われたイ・ビョンホンの「王になった男」の記者会見には報道陣250人が詰めかけ、10年前の熱気を思い起こさせた。
イ・ビョンホン人気もさることながら、「王になった男」が時代劇であることも高い関心を呼んだ一因だ。ここ何年か、日本でも韓国時代劇ブームが続いてきた。
かつて韓国時代劇といえば王や宮廷の権力抗争を描くものだったが、2000年ごろ、ドラマ「ホジュン~宮廷医官への道」あたりから、民衆の視点で描かれた新しい時代劇が生まれた。そのひとつ「宮廷女官チャングムの誓い」(03~04年)は韓流時代劇ブームに火をつけた。さらに近年はフィクションを織り交ぜた斬新な発想による時代劇が生まれ、単なる歴史ものではなく、現代を暗喩的に映し出しているとして注目を浴びている。
とくに昨年の大統領選挙を前に、リーダーのあり方を問う、見応えのある時代劇が生まれた。「王になった男」のチュ・チャンミン監督が「(作品を通じて)今日を語りたかった」と言うように、そこには作り手の同時代へ向けた強いメッセージが込められている。
昨年のドラマ部門の各賞を総なめにした「根の深い木~世宗大王の誓い」もそのひとつ。既得権層の攻撃にあいながら、民のために新たな文字(ハングル)を創製しようと苦闘する王の姿が、熱い支持を得た。現代に通じる政治ドラマとして若者たちにも大人気に。
韓流10年。新しい韓国時代劇が生まれている。
※週刊朝日 2013年2月22日号