中日の大野雄大(C)朝日新聞社
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ヤクルトの山田哲人(C)朝日新聞社
ヤクルトの山田哲人(C)朝日新聞社

 今オフのフリーエージェント(FA)戦線の目玉として去就が注目されていた中日大野雄大(32)、ヤクルト・山田哲人(28)が、そろって早々と残留を決断した。

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 大野は今季11勝6敗、防御率1.82。2年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得し、10完投(6完封)と圧巻の内容だった。FA宣言した場合は宿敵の巨人が獲得に名乗りを上げると見られていたが、スポーツ新聞の中日担当記者はある試合で大野の「中日残留」を確信したという。

 今月5日のDeNA戦(ナゴヤドーム)。大野が7回無失点で11勝目をマークし、チームは2012年以来8年ぶりのAクラスが確定した。エース左腕はお立ち台で、

「僕が入団してからはほぼBクラス。本当にこのAクラスまでが長かった」

と胸中を打ち明けると、こう続けた。

「CS(クライマックスシリーズ)がないのは関係なく、何とか弱いドラゴンズを今年で終わらせて、来年からは優勝を狙えるチームづくりをしないといけないと思ってやってきた。これまでも必死にやってきた7年間やと思うんで、めちゃくちゃうれしいです」

 前出の担当記者は、こう話す。

「大野のあのインタビューは、『中日で来年優勝する』という決意表明だと感じました。義理堅い性格で、先発での復活を信じて使い続けてくれた与田(剛)監督に感謝の思いが強い。故障していたにもかかわらずドラフト1位で指名してくれた中日に対して恩義の気持ちもあります。エースを務めていた吉見一起が今季限りで現役引退し、気持ちもより引き締まったと思います」

 大野はこのお立ち台の6日後、チーム最終戦後に残留を表明した。

 トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を史上初めて3度達成した山田哲もヤクルト残留を決断した。今季はコンディション不良が影響し、94試合出場で打率2割5分4厘、12本塁打、8盗塁。不本意な成績に終わったが、選手としてこれから脂がのってくる時期が来るだけに、FA宣言に備えて複数球団が興味を示していた。特にソフトバンクが獲得に参戦することが確実視されていた。

 だが、山田哲も大野と同様に「チーム愛」を貫いた。スポーツ紙デスクはこう語る。

「山田哲はモチベーションが気がかりでした。チームは2年連続最下位に低迷してなかなか勝てない。過去に横浜(現DeNA)の村田修一、内川聖一が優勝争いでプレーできる環境を求めてFA宣言したように、選手としてのレベルアップを目指して常勝チームに移籍することは決して珍しいことではありません。山田哲も迷ったと思いますが、野心家というタイプではない。7年の長期契約を提示したチームに感謝の思いが強かったのでしょう」

 また、在京球団のある選手は、コロナ禍でプレーしたこともFAの決断に影響を及ぼしているのではないかと推測する。

「今年は遠征中も外食に行くことが禁止され、ホテルの部屋で過ごす時間が長かった。野球と向き合う時間や、自分を見つめ直す時間が増えて、改めて応援してくれるファンへの感謝やチームに貢献したいという思いが強くなりました。FAの選手とクビになった選手を比べてはいけないけど、退団する選手は住む場所が変わったりして大変だなと思ってしまう。コロナがいつ収束するか分からない状況で、住む場所やチームが変化することへの不安は例年より強い。FAしないで残留した選手たちの気持ちは分かる気がします」

 大野と山田哲の残留は、FA権を保有する他の選手の動向にも影響を与えるかもしれない。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事