築100年近いビルの雰囲気を残しつつマイクロ複合施設に生まれ変わった(写真:K5提供)
築100年近いビルの雰囲気を残しつつマイクロ複合施設に生まれ変わった(写真:K5提供)
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老舗鰻屋を改装したビールスタンドではフルーツビールを提供(写真:Omnipollos Tokyo提供)
老舗鰻屋を改装したビールスタンドではフルーツビールを提供(写真:Omnipollos Tokyo提供)
パティスリー「ease(イーズ)」の看板商品は「アマゾンカカオのシュークリーム」(写真:ease提供)
パティスリー「ease(イーズ)」の看板商品は「アマゾンカカオのシュークリーム」(写真:ease提供)

 日本を代表する金融街・日本橋兜町。おやじの町かと思ったら、最近は違うらしい。スーツを着ない若者たちが訪れる、おしゃれな新しい町へと変わりつつある。AERA 2020年11月30日号に掲載された記事を紹介する。

【写真】老舗鰻屋を改装したビールスタンドではフルーツビールを提供

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 銀行建築の荘厳な石造りの建物が点在する東京・日本橋兜町。日本橋駅からも茅場町駅からも徒歩数分に位置するエリアに今年、先鋭的なバーやビストロが次々とオープンした。

 個性的な歴史のある町だ。新1万円札や来年の大河ドラマで話題の渋沢栄一が邸宅を構え、日本最古の銀行・第一国立銀行や東京証券取引所(東証)の前身・東京株式取引所を設立。バブル期は数多くの証券会社が並び、証券マンたちでにぎわった。景色が変わったのは、取引が電子化して東証内の立会場が廃止された1999年ごろ。2008年のリーマン・ショック以降は閉鎖する証券会社も相次ぎ、週末は銀行のATMが閉まるほど、人通りは静かになった。

■レコードの音がBGM

 そんな町の価値をもう一度高めたいと、東証ビルを所有する平和不動産が14年、「日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクト」を発表した。同社ビルディング事業部でプロジェクトを担当する山根拓馬さんは言う。

「金融街というアイデンティティーを残しつつも、新しい目的地を作って、人が集まり、町を回遊する仕組みを作りたい」

 その第1弾が、今年2月に東証の裏手にオープンした複合施設「K5(ケーファイブ)」だ。1923年に竣工された第一国立銀行の別館をリノベーション。スウェーデンを拠点に活躍する建築家デザインユニットが監修した。2階から4階にあるホテルには、日本製の銅板のドア、藍染めの天蓋のベッド、北欧デザインの真っ赤なソファ。全室でアナログレコードの音をBGMにくつろぎの時間が持てる。オープン後はコロナの影響で休業したが、5月に再開。都内のクリエイターのほか、地方から予約があるという。

 1階には発酵料理で話題のレストラン「CAVEMAN(ケイブマン)」、お茶や漢方を使ったカクテルを出すライブラリーバー「青淵(あお)」がオープンした。地下には、米ブルックリンの町の再生を担ったといわれるクラフトビアバー「ブルックリン・ブルワリー」の初のフラッグシップ店も開業した。

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