コロナ禍のストレスのひとつは、人と同じように行動しなくてはいけないことだ。勝手なことはできない。同じようにマスクをかけ、まだ酒を飲みたくても早い店じまいに従わなくてはならない。感染者が多いエリアから少ない地域への移動も制限される。守らない人に対して、海外では罰金を設定し、日本は同調圧力を働かせる。どちらにしても、自由が制限された環境に追い込まれる。皆が従うのは、感染拡大を防ぐためには仕方ないという思いがあるからだ。

 しかしGoToトラベルは違う。コロナ禍で疲弊した旅行業界を活性させる目的があるにせよ、そこには旅の自由があるはずだ。しかしGoToキャンペーンの申し込みがIT系旅行会社が中心というあたりから雲行きがおかしくなる。多くの人が訪ねる観光地を訪ねないと、その恩恵を受けられない傾向が強くなる。皆と同じような旅になってしまう。

 金をかけない旅を続けてきた。そんな本も書いてきた。500円値引きに誘われ、新庄で東京と同じメニューを開いている自分が切ない。

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも