続いて、登場した料理。
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★マンボウの刺身・・・肉を切るだけ。
★マンボウのとも和え・・・肉と肝臓は湯通し →肝臓は叩いてペースト状に →ボウルにペースト状の肝臓+肉+調味料(味噌や醤油)を混ぜて完成。
★マンボウの腸炒め・・・腸を切りさっとゆでる →ネギとゆでた腸を炒める →ペースト状の肝臓+調味料(お好みで味噌、豆板醤、カレー粉など)を加えて炒めれば完成。
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ちなみに、作中に登場した料理されるマンボウの大きさは全長50~60cmであった。
■漫画で使われた知見の検証
個人的には漫画でヤリマンボウやウシマンボウなど他のマンボウ科の紹介もあればうれしかったが、マンボウの漫画自体が稀有なので贅沢は言えない。マンボウの知見は全体的によく調べられており、特に解体作業や料理の描写はリアルに再現されていた。作者自身が実際にマンボウを捌いて料理した経験が漫画に反映されていて素晴らしい。ここでは間違っていた知見について補足解説する。
「近海のフグが熱帯の海に適応して進化した」という知見にある熱帯の海という表現は、おそらく外洋のことを指しているのだと思われる。実際、マンボウは北海道など寒い地域にも出現する。マンボウのあの独特な形態は、進化の過程で外洋に適応した姿だと推測されている。マンボウ科に系統的に近い魚類はフグ科+ハリセンボン科とする考えが現在有力だが、マンボウに進化する途中の化石が発見されていないため、実際はどんな魚からマンボウに進化したのかは不明である。
「寄生虫が多いため、シャチに狙われない」という噂については間違いで、実際シャチはマンボウを捕食する。日光浴行動(いわゆる「マンボウの昼寝」)中に海鳥がマンボウの寄生虫を食べることは証明されているが、この行動をする理由は別にあり、深海に潜って冷えた体を温めるためということが最近の研究で明らかにされた。
マンボウの肝臓は作中でも書かれているように、売られているものでも寄生虫が付いていることが多いが、火を通せば問題なく食べられる。私も食べてきた。肝臓は濃厚な味なので、味噌と合わせて料理に使えばコクがあって美味である。
サブカルに使われたマンボウの知見は今後も検証していきたい。
【主な参考文献】ぽんとごたんだ.2018.28食め:水族館のヤツ!?.桐谷さん ちょっそれ食うんすか!?.双葉社,5: 99-132.
●澤井悦郎(さわい・えつろう)/1985年生まれ。2019年度日本魚類学会論文賞受賞。著書に『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)、『マンボウは上を向いてねむるのか』(ポプラ社)。広島大学で博士号取得後も「マンボウなんでも博物館」というサークル名で個人的に同人活動・研究調査を継続中。Twitter(@manboumuseum)やYouTubeで情報発信・収集しつつ、来年以降もマンボウ研究しながら生きていくためにファンサイト「ウシマンボウ博士の秘密基地」で個人や企業からの支援を急募している。