新型コロナの影響による失業から経済的に困窮し、家賃の支払いに苦しむ人たちがいる。住居喪失の危機は命の危機でもある。「住居喪失」を特集したAERA 2020年12月14日号から。
【コロナ禍で急増 「住居確保給付金」の4月以降の支給決定件数はこちら】
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賃貸住宅で家賃を払えないということは、路上に放り出されるリスクに直結する。
「このままだと家賃も払えなくなります」
11月下旬、東京都豊島区のハローワーク池袋でパソコンの求人検索画面に向かっていた男性(36)は、言葉少なに語った。
男性はフリーランスでイベント関係の仕事をしていたが、コロナによってイベントは軒並み中止になった。月30万円近くあった収入は4月以降、ほぼゼロになった。フリーランスなので失業給付ももらえない。
そこへ重くのしかかるのが家賃だ。都内の一人暮らしの部屋の家賃は月9万円。持続化給付金の100万円をもらい、しばらくはしのいだがそれも底をついた。8月には家賃が払えなくなった人を支援する国の公的制度「住居確保給付金」を得たが、それも10月に切れた。
■死ねば楽になるかも
これまでハローワークに行くことは躊躇していたが、先が見えなくなり、この日初めて訪れたという。男性は言う。
「とにかく何でもいいから安定した仕事に就きたい。家を失うのが一番怖いです」
住居確保給付金とは、2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度で、支給額は市区町村ごとに異なる。東京23区の場合、1人世帯で毎月5万3700円、2人世帯で6万4千円を上限に給付が受けられる。厚生労働省によると4~10月の利用者は全国で計10万件を超え、リーマン・ショック後の2010年度1年間(3万7151件)の約3倍にもなった。
だが、支給期間は原則3カ月、最長で9カ月。この間に仕事に就くなどして生活を立て直してもらう狙いだが、現実は厳しい。
神奈川県に住む女性(33)も苦しい胸中を語る。
「もうお金が、ありません」