多くの業種で高齢化が進む中、歯科医師の平均年齢も高くなっているように思われます。歯科医師には定年がありませんが、視力や手先の器用さ、体力などが必要とされます。この点、年をとっても問題はないのでしょうか? さらに、歯科医師の高齢化は「歯科医師過剰問題」の要因の一つといわれていますが、この点を現場の歯科医師はどう考えているのでしょうか? 『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師にうかがいました。
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厚生労働省が2年に1回実施する「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」調査によれば、2018年12月31日における全国の歯科医師数は10万4908人、このうち診療所(以下、歯科医院)で働く歯科医師は9万105人で、歯科医院の増加は続いています。
歯科医師の年齢は30年ほど前から年々、高くなる傾向にありますが、歯科医院勤務の歯科医師の平均年齢では53.5歳。1988年の平均46.4歳から7歳ほど高くなっています。
これは歯科医院を開設している歯科医師たちが年をとっている証拠です。
歯科医院で働く歯科医師の年齢は「50~59歳」(25.7%)が最も多く、次いで「60~69歳」(23.3%)、70歳以上も10.7%という数値が高齢化をあらわしています。それにしても、50歳以上が約60%を占めているとは驚きです。
「年をとってもきちんと治療できるの?」と疑問を持つ患者さんの声も、当然かもしれません。自分のかかりつけ医が、いつまで現役でいてくれるかと心配する人もいるでしょう。
私もこの中に当てはまります。そこで自分はどうなのだろうかと改めて考えてみました。
歯科は口の中の小さな病変を治療します。歯周ポケットの奥の歯石を取り除いたり、最小限の切開で行う歯周病の外科治療、最も難しい処置と言われる「神経(歯の根)の治療」などがあります。
これらの治療で問題になるのは「老眼」です。近くが見えなくなれば作業に大きな支障が出ます。しかし、これはもれなく老眼鏡を使うこと、さらに老眼鏡の上に拡大鏡を重ねることで対処できています。