「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウ内部の物質を持ち帰る計画を見事成功させた。初代とは違い順調な行程にみえたが、裏では計画遂行をめぐる激論があった。AERA 2020年12月21日号では、「はやぶさ2」のミッション成功の裏側に迫った。
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6日午前2時28分(日本時間)、オーストラリアの夜空に明るい尾を引く一筋の光が走った。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設がある相模原市では、深夜にもかかわらず集まった約500人の市民が食い入るように映像を見つめ、声を上げた。
「おおーっ」「おかえり!」
光の主は、探査機「はやぶさ2」が持ち帰った、小惑星「リュウグウ」の砂が入っているとみられるカプセルだ。JAXAは同日、豪南部の砂漠でカプセルの回収に成功。一方、6年間、約52億4千万キロに及ぶ旅を完璧に成功させたはやぶさ2本体は、休む間もなく地球と火星の間を回る別の小惑星「1998KY26」に向かい、2031年の到着を目指す。
■クレーター生成に成功
「実験室でやっていたことをスケールアップし、実験室以上の精度でしかも宇宙空間で実現するという夢みたいな経験をさせていただいた」
こう振り返るのは、はやぶさ2サイエンスチームの荒川政彦・神戸大学教授(55)だ。
19年4月5日、はやぶさ2は小型搭載型衝突装置(SCI)を用いてリュウグウに金属塊を打ち込み、人工クレーターを生成することに世界で初めて成功。はやぶさ2から分離されたカメラが、表面の岩や砂が逆円錐状に飛び散る様子を押さえた。このカメラとデジタル通信装置の開発チームリーダーを務めた荒川さんは、初めて明らかになった小惑星でのクレーター形成過程を今年3月、米科学雑誌サイエンスに発表した。
人工クレーターは直径14.5メートル。地上で模擬実験したサイズの約7倍だった。荒川さんらはこうしたデータを基に、リュウグウが小惑星帯に存在してきた期間を640万~1140万年と推定。観測で見積もられていた約600万~約2億年という推定年代を大幅に絞り込み、他の小惑星の年代推定にも再検討を促す成果をもたらした。