ワイドショーでは、日々、司会やコメンテーターの方々が色々な意見を言っている。僕も一時期、コメンテーター的な仕事をやらせてもらいましたが、自分にはその才能がなかった。覚悟がなかった。そういう番組で「おもしろく」聞こえるコメントは、白か黒か、はっきりした意見。たとえ、その人のことを悪いと思っていなくても、悪いと言った方が番組としてはおもしろい時がある。自分にはその覚悟がなかった。

 コメンテーターは無理だったけれど、こういうエッセイでは自分の意見を書いている。自分の文章で書いているからいいだろう!と思っている勝手な正義。

 おもしろければ正義だと思ってる自分もいる。だけど、おもしろいと思ったその先には、傷ついてる人がいる時もある。

 ドラマ「M」を書いたときに、田中みな実さん演じる役に眼帯を付けてもらった。片目を失明してるかのような設定にした。そのほうが「おもしろい」と思ったからだ。だけど、片目の視力を失った人がこれを見たらどう思うんだろう?と思っていた自分もいる。だけど「おもしろい」と思う自分が勝って、そういうキャラクターにした。

 改めて、この映画を見て、自分がものを作る時に、「おもしろい」と「誰かを傷つけるかもしれない」ことのバランスを考えて、覚悟を持たなきゃいけないと思った。

 それはツイッターでつぶやく一言も同じである。

と、なんだか説教臭くなったが、とにかくこの映画はとてつもなくおもしろい。見てください!!

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。SNSでも話題のテレビ朝日系ドラマ「先生を消す方程式。」の脚本を担当。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中

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