自分では「スキル」と感じていないことも、他社や異業界から見れば技能と感じることはある。自己の分析こそ、この時代に必要だ(撮影/写真部・張溢文)
自分では「スキル」と感じていないことも、他社や異業界から見れば技能と感じることはある。自己の分析こそ、この時代に必要だ(撮影/写真部・張溢文)
この記事の写真をすべて見る
AERA 2020年12月21日号より。小数点以下は四捨五入しているため、必ずしも合計が100にならない
AERA 2020年12月21日号より。小数点以下は四捨五入しているため、必ずしも合計が100にならない

 新型コロナの感染拡大の影響から会社員の収入が減っている。その一方で年収アップを果たした人もいる。先行き不透明な時代に企業が求めるものとは。AERA 2020年12月21日号で掲載された記事から。

【表】コロナ禍の転職で年収が「上がった職種」「下がった職種」はこちら

*  *  *

 現職より、200万円増──。神奈川県に住む松尾英樹さん(30)は転職活動中に提示された年収額を見て、驚いた。

「年収アップを目指していましたが、これだけの提示があるとは思っていませんでした」

 これが決め手のひとつとなり、今年2月、松尾さんは企業の広報活動を代行するPR代理店から、マンガアプリの開発や宿泊施設のIoT事業を手掛けるアンド・ファクトリーの広報職へと転職した。

「少し前から、広報職への企業からの引き合いがかなり強まっていると感じます。その印象は、コロナの影響が本格化して以降も変わりません」(松尾さん)

 転職エージェントなどのデータを見ると、広報職の引き合いは目立って強いわけではない。広報・広告職を専門とするキャリアコンサルタントの男性はこう話す。

「広報系の求人数はコロナ前の約8割。転職時も『前職考慮』の度合いが大きく、大幅な年収アップは多くありません」

 しかし、PR代理店出身の広報職人材はいま、一部で「宝の山」とみなされている。

「PR会社のスタッフは、あらゆる企業のサービスや商品を扱います。クライアント側の窓口とメディア側の窓口の両方を経験する人も多い。コロナ禍もあって、企業には生き抜くための新たな課題が次々に生まれています。多様化する課題に対して提案型で仕事をするには、PR会社での経験はうってつけなのだと思います」

■休職中の「時間」が転機

 埼玉県在住の女性(27)も、PR代理店からの転職組だ。昨年12月に第1子を出産。4月に復職予定だったがコロナの影響で保育園が休園となり、休職を延長した。「時間ができた」ことで、これまで具体的には考えていなかった転職を思い立ったという。結局復職せずに退職し、8月からはインターネットニュースメディアで広告営業を担当している。

次のページ
求められるスペシャリストとは?