西田医師は、老親を心配する子ども世代に、次のようにアドバイスします。
「私も高齢者から、『餅を食って死ねたら本望だ』と言われたことがあります。でも、本当のところ、死にたいとは思っていないはず。親が、食事中にむせて咳をする場合には、子どもは、『餅は食べないほうがいいよ』と、一度は提案してください。それで、どうしても食べる、と言うなら、窒息死を防ぐ対策を取りましょう」
西田医師の対策とは、次のようなものです。
(1)餅は、小さく切る。
(2)口が乾いていると、餅が粘膜に付着しやすいので、食べる前に水やお茶を飲んでもらう。
(3)のみ込んでも口の奥に食べ物が残り、それが気管に入りやすい。1回のみ込んだところで、水やお茶を渡し、再度しっかりとゴックンしてもらう。
(4)ゆっくり、よくかんで食べてもらう。また、次々と口に入れないように言う。
(5)アルコール飲料を出さない。咀嚼・嚥下の動きが悪くなる。
(6)必ず誰かが見守る。詰まらせたときは、背中をたたく背部抗打法、背中側から手を回して胸を突き上げるようにする腹部突き上げ法(ハイムリック法)で吐き出させる。推奨はできないが、非常手段として掃除機で吸引する方法がある。
(7)餅の代用品を食べてもらう。
親が別居の場合は、「年に何回かは親と一緒に食事し、食事中にむせて咳をしないかを確認してください。餅は、帰省して見守ることができるときに食べてもらってほしい」と、西田医師は言います。
また西田医師は、口腔機能低下症の検査を受けることをすすめます。
「現在、65歳以上の人は、口腔機能低下症の検査や指導を、医科でも歯科でも保険診療で受けられます。当院でも、外来で嚥下造影検査や内視鏡検査などの検査や指導をおこなっています。かかりつけ医に相談し、受診先を紹介してもらうのがよいでしょう」
(文/山本七枝子)
【教えてくれた人】
西田伸一医師。東京都調布市の在宅療養支援診療所、西田医院院長。東京都医師会理事。