新年には、年老いた親が餅を詰まらせないか心配です。しかし「詰まると危ないから、餅は食べないで」などと言おうものなら、「それで死ねたら本望だ!」と、正月早々親子げんかが起こりそう。けんかしてでも止めるべき? それともいい方法はある? 高齢者の訪問診療に携わる西田伸一医師にお聞きしました。
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高齢者の窒息事故は、1月に最も多く発生しているようです。
筑波大学の研究グループが全国での死因統計を解析した研究結果では、食べ物の誤嚥(ごえん)による窒息死は、11年間(2006~16年)で5万2366例、その73%は75歳以上の後期高齢者。暦日ごとの件数は、1月1日が平均71例、2日が平均55例、3日が平均45例となっており、研究期間の1日あたりの平均13例を大きく上回ります。食べ物の種類は不明ですが、餅が原因である可能性が高いとしています。
窒息事故の起こりやすい食べ物について、西田医師は次のように話します。
「やはり餅が多いようです。握りずし1貫、ステーキ肉1切れが、気管に詰まることもよくあります」
内閣府の資料によると、窒息事故件数の多い食品として、1位に餅、2位にご飯、3位に飴、4位にパン、5位にすしが挙げられています(06~08年の事故情報の分析)。
西田医師によると、食べ物で窒息するのは、かむ、かんだものを喉に送る、のみ込むなど、一連の摂食嚥下(えんげ)の機能が加齢の影響で低下しているためとのことです。最近では、これを「オーラルフレイル」と呼び、要介護のリスクの一つとされます。
親の摂食嚥下機能の低下は、どうすればわかるのでしょうか。
「親が、食事中にむせて咳をするなら、摂食嚥下機能が低下していると考えましょう。また、のみ込みに関係する喉のあたりの筋肉が衰えると、声帯の動きも悪くなり、声がかすれます。これも機能低下のサインです」
半年前と比べて硬いものが食べにくくなった、さきイカ、たくあんくらいの硬さのものをかめないなども、よくない兆候のようです(日本歯科医師会、オーラルフレイルのパンフレット)。