しかし蓋を開けてみれば、会場内はロープなどで仕切られていたものの、検査を受けた選手・スタッフと、観客を含めた検査を受けていない人間との境目は徹底されていなかった。会場にいるすべての人間が、施設のトイレを共有していた。多大な検査費用をかけたならば体裁だけではなく、運営側は責任をもって細部まで管理するべきだろう。

 また密を塞ぐため報道メディアは少数に限定された。リモートによる取材、会見が行われ、現場にいる報道陣も選手との接触を回避するという呈でオンライン取材が行われた。しかし、実際の現場は動線不確定により接触も可能だった。また会見時には音声の不具合や大会前後の資料提供の不備も目立った。

 ゾーニング管理の欠落を考えると、屋外でしっかり距離をとりながら現地での取材を可能にしてもよかったのではないか。とくに東京オリンピック前で報道陣の数も増加傾向にある。メディア露出は事業化のバロメーター。メディアの端くれにいる者として、公平かつ快適な取材環境の整備は切なる願いだ。大会の実行委員長も務めた紀伊氏は立川立飛大会の反省点をこう振り返る。

「国内ツアーをJVAで管轄するようになってから数年が過ぎているのに大会運営が未成熟な状況です。これまで傘下組織に頼り切りだったという部分も否めません。経験の足りなさから準備不足も目立ち、大会当日にご迷惑をかけしてしまった部分もありました。今後は全力をあげて大会運営の独り立ち、組織のマネジメントを確立させたい」

 来季以降は、有料化の設備やコロナ対策などの支出が発生し、生み出すべき収益とのバランスが問われる。事業化にたどり着くには、いくつものハードルを乗り越えなければならないだろう。大会を取り仕切る組織の成熟と競技環境の発展は、切っても切れない運命共同体。ビーチバレーボールが目指す収益化は、新たなビジネスコンテンツとして確立するのか、今後注目していきたい。(文・吉田亜衣)

●吉田亜衣/1976年生まれ。埼玉県出身。ビーチバレーボールスタイル編集長、ライター。バレーボール専門誌の編集 (1998年~2007年)を経て、2009年に日本で唯一のビーチバレーボール専門誌「ビーチバレーボールスタイル」を創刊。オリンピック、世界選手権を始め、ビーチバレーボールのトップシーンを取材し続け、国内ではジュニアから一般の現場まで足を運ぶ。

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