自動車保険を選ぶとき、同じ補償内容だと思い込んで、価格の安さだけで選んでいないだろうか。しかし、同じように見えても、いざ重大な事故が起きると補償金額が損保会社によって大きく異なることがあるのだ。意外に知られていない、自動車保険の「落とし穴」に関して、ジャーナリストの柳原三佳氏がレポートする。

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 外資系損保チューリッヒの、次のようなCMを見たことはないだろうか。

客:自動車保険、チューリッヒにすると安くなるって本当ですか?
オペレーター:はい、田中様はゴールド免許ですから、ここまでお安くなります。(このとき画面左に表示されたカウンターの数字が、4万円台からどんどん下がっていき、「29650円」で止まる)
客:えー! 補償内容は今と変わらないのに?

 また、やはり外資系のアクサ損保は、ウェブサイトのトップページに、「他社と比べてみてください」という「保険料比較」ページへの入り口を掲げている。そこから入っていくと国内損保4社とアクサの値段をグラフで並べて、「43.1%OFF!! 31810円、アクサダイレクト」と自社の保険料がどれだけ安いかを宣伝している。

 こうした価格の安さを強調した比較広告に警告を発するのは、弁護士らで構成する適格消費者団体「消費者支援ネット北海道(ホクネット)」だ。ホクネットの検討委員会委員である青野渉(わたる)弁護士はこう語る。

「テレビやラジオなどで、『補償内容は同じなのに価格が安い』といった損保会社の比較広告を見聞きすることがありますが、実際に交通事故被害者の相談を受けている弁護士としては、『補償内容は同じじゃないから気をつけろ!』と声を大にして言いたいのです」

 青野弁護士が特に問題視するのは、人身傷害保険の「倍額条項」だ。

週刊朝日 2013年3月22日号