ニーズは少ないかもしれないが、切実に求める人がいる。ファッション業界が、これまで取り残してきた少数者たちにも目を向け始めた。SDGsや多様性が重視される社会で、業界に変化が生まれている。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号から。
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2020年の隠れたヒット商品といえるのが、ユニクロの160サイズまでの前開きのボディースーツ(ロンパース)だ。購入者の満足度が高く、販売サイトのレビュー欄は12月15日時点で147件。「ユニクロさんの企業努力すばらしい」「障害者にも目を向けて頂いてありがとうございます!」「素材といい、お値段といい、ユニクロさんに感謝しかありません」と、賛辞が多いのが印象的だ。
上下一体型のロンパースは、一般的に新生児や乳児の肌着に使用され、ほとんどのメーカーは2歳ぐらいの子どもが対象の90までのサイズしか作っていない。ただ、障害や病気で介助が必要な場合は抱き上げるたびに肌着がめくれ上がり、かぶり着用が難しいこともあるため、前開きのロンパース肌着が重宝する。これまでは障害・疾患者向け商品を扱う店で1枚2千~3千円ほどで購入するか、自作するしかなかった。そんな中、ユニクロが1枚990円で発売。評判になり、想定の5倍の売れ行きだという。
■無視されてきた障害者
ここ数年、ファッション業界に「多様性」の波が押し寄せている。ファッションといえば、S、M、Lなどの平均的なサイズ展開やモデル体形に象徴されるように、「モデル」に合わなければ「対象外」とされるイメージさえあった。だが、20年にはユニクロが障害や病気のある人向けの商品を発売したほか、6月にはグッチがダウン症のある女性を初めて広告モデルに起用。7月には資生堂のグローバルキャンペーンで、「美に境界線はない」ことを体現する4人のアンバサダーの一人に両足義足のアメリカ出身のモデル、ローレン・ワッサーさんが登場した。
ブランドコンサルタントでファッション業界に詳しい守山菜穂子さんは言う。