インソールは、外反母趾の要因の一つである偏平足を矯正するためのもので、足裏をアーチ状に持ち上げる形になっている。痛みの軽減や進行予防になるため、軽症患者には効果的だという。
治療に使うインソールは市販のものでなく、特別な資格を持った義肢装具士がいる病院に行き、オーダーメイドで作ってもらうのがよいだろう。
他にも、保存的治療にはテーピングやサポーターによる矯正や、運動療法などがある。どれも変形を完全に治すことは難しいが、多くの軽症患者の悩みである「痛み」を改善するには適した治療法といえる。
完全に変形を治すのであれば、手術が必要になる。菊池医師は、手術も患者の状態によってさまざまだと話す。
「外反母趾の手術は歴史が長く、100種類近くの術式があります。たまに、知り合いが外反母趾の手術を受けて長いこと入院していたのを見たから怖いという方もいらっしゃるのですが、術式によっては日帰りでおこなえて、翌日には歩き始めてもらうようなものもあります。ただ、重症度によっては、3週間から1カ月くらい入院してもらうこともあるので、重症化する前に早く病院に来ていただくのが良いと思います」
外反母趾を放置した場合、症状が進行することはあっても、自然治癒することは決してない。症状が進行し、親指が他の指と重なったり、交差したりしてしまうと、履ける靴がなくなってしまうケースもよくある。保存的治療や、簡単な手術で済むうちに病院にかかるのが得策だろう。
また、外反母趾を治すには、直接的な治療だけでなく、患者自身が正しい知識を身につけ、実践することも重要だという。
「よくあるのが、足が靴の中で当たって痛いから、当たらないように大きい靴を選ぶ、という考え方ですが、実はこれは間違いです。ジャストサイズの靴を選んで、靴ひもをしっかりしめて固定すれば、内部で足が動いて痛むといったことはありません。大きい靴を履いていると、むしろ症状を進行させてしまうこともあるのです」
外反母趾用として売られていても、ゆるい作りの靴もよくあるという。一般的な病気なだけに、市販の外反母趾用グッズは多いが、医師の指導のもとで利用するよう気をつけたい。
(文・中川雄大)