1月下旬の週末、ギリシャ南部のペロポネソス半島にある港町ナフプリオンに、黒服姿の男たち100人余りが集まった。 ギリシャ国旗を掲げ持ち、
「外国人は出て行け」
「ドロボーは出て行け」
と野太い声を張り上げ、表通りをデモ行進した。
彼らは右翼政党「黄金の夜明け」の支持者たちだ。昨年の総選挙で一気に18人(定数は300)を当選させて初の議席を獲得し、存在感を増す。
「外国からの援助を必要としない、独立したギリシャを実現しよう」。デモ行進の出発前、国会議員のイリアス・カシディアリス氏(32)は檄を飛ばした。テレビの政治討論番組で、反論してきた女性議員らにコップの水をかけ、殴りかかった「乱暴者」として知られる人物だ。支持者にとっては頼れる「兄貴分」なのだろう。短く刈った髪、鋭い目つき、ジーンズに黒の革ジャンを羽織った姿は威圧感がある。
記者が取材を申し込むと、
「報道機関は信じられない。我々への批判やウソばかりを流している」
「これまでの政治家たちの不正義に、みんな頭にきてるんだ。この国を大掃除できるのは我々だけだ」
などと話した。
どんな人々が活動に参加しているのか。北部のテッサロニキ郊外の漁師町。支部長を務める男性は、退役軍人だった。メンバーの若者は「海軍学校の学生」と名乗り、「ユダヤ人が金融機関を操り、ギリシャを支配しようとしている」と陰謀論に染まっていた。格闘技のインストラクターや漁師だという男性もいた。
※AERA 2013年3月18日号