甲子園の春夏連覇を果たした大阪桐蔭の母体である大阪産業大学の「不正入試」が明らかになった。補助金カットを免れるため、付属高校の生徒を受験させて「入学者数」を調整していたというのだ。ノンフィクションライター・西岡研介氏と本誌取材班が追及する。
私立大学等経常費補助金(以下「経常費補助金」)は、私立大の経営健全化などを目的に、国(文部科学省)から「日本私立学校振興・共済事業団」を通じ、各私大の学部ごとに交付される補助金だ。私大にとっては、学生が払う入学金や授業料などとともに、大きな収入の柱となっている。
しかし、ある学部の単年度の入学者が、入学定員の「1.4倍」(2008年度当時の基準)を超えた場合は、学生が増えすぎると教育環境が悪化するとの観点から、その学部の通年(4年制大学の場合は4年)の補助金が全額カットされる。そして、09年度以降は入学定員の原則「1.3倍」と、基準がさらに厳しくなることが決まっていた(09年度は経過措置で「1.37倍」)。問題の不正入試が行われたのは、まさにこのタイミングだった。
補助金カットを免れるために大産大は、付属校の優秀な生徒を使って外部からの受験生を落とし、入学者数を調整しようとしたという。
しかし前述のとおり、09年度当時の基準は、文科省の経過措置で入学定員の「1.37倍」となっていた。にもかかわらず、大産大はなぜ、原則の「1.3」という数字にこだわったのか。告発グループの一人である大産大現役職員が語る。
「恥ずかしながら当時は、私を含む職員や教員、さらには実際に入学試験を取り仕切る入試センターの幹部までが全員、この文科省の経過措置に気づかず、原則のまま『1.3倍』と思い込んでいたのです。恐らく皆、莫大な赤字を抱え、焦っていたのでしょう。『1.37』で計算していれば、基準を超過していなかった可能性もあったかもしれないのに、当時は『1.3』という数字だけが独り歩きしていたんです」
要は、大産大の「不正入試」は、補助金カットの基準倍率の読み間違えから始まったというわけである。
※週刊朝日 2013年3月29日号