茶飲友達、募集──。わずか3行の新聞広告は、実は高齢者専門の売春クラブの勧誘だった……。2013年10月に、実際にニュースになった高齢者売春クラブの摘発事件を基に現代社会の孤独を見つめた群像劇「茶飲友達」が2月4日から公開される。外山文治監督と主演俳優の岡本玲が語り合った。
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――自ら脚本を書き、メガホンを取ったのは、30歳の頃から高齢者の光と影をすくいとってきた外山文治。33歳で撮った長編デビュー作「燦燦─さんさん─」(2013年)は、孤独な余生をどう生きるかをテーマに婚活する高齢者の姿を描いた。「当時は時代の少し先を行くという思いで撮った」(外山監督)が、公開1カ月前にこの高齢者売春クラブ摘発のニュースを知って愕然(がくぜん)とした。
外山:高齢者売春に参加していた一般市民が東京で千人以上いたということを知って、打ちのめされる思いがしました。その一方で、摘発された後の高齢者たちはどうなるのか、法に触れることはもちろん問題ですが、(孤独を埋め合わせていた)クラブを解散させることが果たして正しいのか。このニュースは自分の正義感や価値観が揺らぐ出来事だったので、いつか映画にしたいと思っていました。
――妻に先立たれ孤独に生きる時岡茂雄(渡辺哲)はある日、新聞の三行広告に「茶飲友達、募集」の文字を見つける。電話をかけてみると、それは高齢者専門の売春クラブ「茶飲友達(ティー・フレンド)」。組織を運営するのは、代表の佐々木マナ(岡本玲)をはじめ、20代の若者たちだった。
外山:本作は高齢社会を描きながら、若者の葛藤も必然的に描き出すことになるという思いがありました。現場でも、とても元気なシニアな俳優とそれに圧倒される若者たち、みたいな図式があったんです。たぶらかしていたつもりが逆に窮地に追い詰められていく若者たち、みたいな。映画の中との親和性も高かったので、高齢者と若者がうまく共存できたと思っています。