投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表で、「伝説のトレーダー」の異名を持つ藤巻健史氏は、現在、世界における日本の地位が危機的状況にあると指摘する。

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 私がモルガン銀行に勤務していた十数年前、日本はまだ世界中の投資家の注目の的で、日本の情報を仕入れようと、みな必死だった。

 それなのに日本はバブル以降、二十数年間を無為に過ごしてしまった。名目GDP(国内総生産)をまったく伸ばせず、20年前には日本の8分の1だった中国に2010年、抜かれてしまったほどだ。これでは、世界の投資家の目が日本に向かなくなったのは当然だ。

 同じようなことをテニス仲間の加藤隆一・慶応大学医学部名誉教授からお聞きしたことがある。医薬品の承認審査基準を3極(日・米・EU=欧州連合)で同じにしようという目的で1990年に発足した「日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)」での公用語は、英語とともに、仏語でも独語でもなく、日本語だというのだ。それだけ昔は日本に存在感があったということだ。

 ところが、以前は世界の25%を占めていた日本国内での医薬品売り上げが最近では10%近くまで落ちこみ、公用語としての日本の地位が危ぶまれる状況になりつつある、ということなのだ。

 日本は過去の栄光を取り戻すべきだ。それには、多少つらくても過度の悪平等をやめ、競争社会に戻るべきだ。言い換えれば結果平等主義から機会平等主義への大転換が必要なのだ。

週刊朝日 2013年3月29日号