三浦さんも指摘していた「防風通聖散は虚証である脾胃虚弱タイプの人が飲むと下痢を起こす」が、まさにそう。湿痰タイプ、お血タイプ、脾胃タイプはあくまでもざっくりした分類だと前述したが、複数のタイプが混合している人もいる。迷った場合は、自己判断せず、漢方薬に詳しい専門医や漢方薬を扱う薬剤師の指示を仰ぐべきだ。
「患者さんの話を聞いていると、『自分は虚証だ。元気が出る漢方薬を飲まなくてはならない』と思い込んでいる人も結構います。しかし専門家から見ると虚証ではなく実証、あるいはその逆、というケースはよくあります」(田中さん)
■専門家への相談も選択
「証」に合った漢方を飲むためには専門家との相談も良い選択肢。自分の体のことでも、他者からの目が参考になるケースがある。なお、医師の診察に基づき処方される漢方薬は、健康保険が適用される。
さて、取材したすべての医師、薬剤師が強調した言葉がある。それは、「漢方薬だけでは痩せない」ということである。
「漢方薬を飲むだけなら、痩せる効果がある薬でも体重を3~4キロ落とせればいい方でしょう。漢方薬の目的は体質改善、病気治療。食べれば太るし、運動しないと痩せません。漢方薬はひとつの手段。漢方薬で体を整え、生活習慣改善で適切な体重を維持できるようにしてください」(三浦さん)
楽しては痩せられないのだ。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2021年1月18日号より抜粋