「このうち湿痰タイプとお血タイプが『証』のうち『実証(じっしょう)』になり、脾胃虚弱タイプが『虚証(きょしょう)』になります」(三浦さん)
東洋医学では、人間の生命力や抵抗力を「正気(せいき)」といい、病気をもたらす「邪(じゃ)」が正気の強さを上回ると不調が生じ、病気に至ると考えられている。実証は「邪」が強くて不調が生じている場合を指し、虚証は「正気」が弱くて不調が生じている場合を指す。わかりやすく言うと、実証は「壮健な人が不健康になった状態」、虚証は「虚弱な人が不健康になった状態」だ。
■巣ごもりで体重増加
40代の女性は、ぽっちゃりしていて太鼓腹。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務中心になり、“巣ごもり”生活を送っていたところ、2カ月で体重が5キロ増えた。日頃からの悩みとしては、便秘があり、汗かき。漢方薬局で相談すると、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を処方された。これを飲みながら、毎朝30分間の早足ウォーキングも実施。5カ月で6キロ痩せた。
「防風通聖散は一般的に『痩せる漢方薬』として知られています。ただし、防風通聖散が合わない『証』の人が飲むと、かえって不調を招きます。特に『虚証』の人、肥満の三つのタイプで言えば脾胃虚弱タイプの人が飲むと下痢を起こしてしまいます」(三浦さん)
防風通聖散は、がっちりとした色白の肥満者や太鼓腹で、暑がり、汗かき、のぼせなどがある場合に効果的だ。タイプで言えば、湿痰タイプになる。日本の東洋医学では、「気(き)・血(けつ)・水(すい)」という言葉がよく出てくる。簡単に言うと、「気」は目に見えない生命エネルギー、「血」は血液とその働き、「水」は血液以外の水分とその働きのこと。湿痰タイプは、中でも「水」が滞り、代謝異常を起こしている。防風通聖散はそれらを改善する作用があり、西洋医学でいう高血圧、高脂血症などにも使う。
「もうひとつ一般的な漢方薬を紹介するとしたら、大柴胡湯(だいさいことう)です。上腹部に熱がたまり、気が滞った実証タイプの便秘も改善します」(同)