「脾胃虚弱タイプには、五積散(ごしゃくさん)も使われます。温・熱性の生薬で脾胃を温め、腹痛、冷え、下痢などを治療します」(三浦さん)
■副作用ゼロではない
漢方薬というと、「副作用がない」と思われがちだが、それは間違いだ。一例を挙げると、漢方薬である小柴胡湯(しょうさいことう)とインターフェロン製剤による間質性肺炎(肺の間質組織に線維化が起こる総称)の問題が過去に報告されている。
小柴胡湯は慢性肝炎における肝機能障害を改善するということでC型慢性肝炎の治療などに用いられてきたが、1992年、インターフェロン製剤がC型慢性肝炎に適応拡大されると、小柴胡湯との併用の症例数が増え、間質性肺炎の症例報告も増加。94年には小柴胡湯とインターフェロン製剤との併用は禁忌になった。しかしその後も小柴胡湯による間質性肺炎の報告は相次ぎ、96年には死亡例も明らかになっている。
あえてこの例を挙げたのは、「漢方薬が危険」と言うためではない。薬たるもの、副作用がゼロのものはない。自分に合った漢方薬の選択が大切なのだ。
「正しく使えば、漢方薬の副作用は比較的強くありません。ただし肥満に関する漢方薬で、医師の処方箋(せん)を必要としないOTC医薬品を服用するときは、自分の『証』に注意しなければなりません」
こう言うのは、東邦大学医療センター大森病院東洋医学科准教授の田中耕一郎さんだ。
痩せることを謳(うた)ったOTC医薬品の漢方薬には、「大黄(だいおう)」という生薬が入っているものがある。便秘を解消する「瀉下(しゃげ)作用」、体を冷やす作用、血の巡りを改善する作用などがあり、お血による便秘や精神的に落ち着かない状態、のぼせなどを改善する。湿痰タイプに合うものとして紹介した防風通聖散や大柴胡湯、お血タイプの桃核承気湯にはいずれも大黄が生薬として入っている。
「大黄は『実証』の人、すなわちお血タイプや湿痰タイプにはいいのですが、『虚証』の人が飲むと下痢をし、元気をなくしてしまいます」(田中さん)