「施設内でクラスターが出たとしても、スタッフに対するPCR検査は『マスクをつけないで15分以上会話した』などの条件がないと、濃厚接触者として認められず公費での検査も受けられない。この対応はソーシャルワークの最前線で働いていても、一般人と同じ。結局、自分たちで民間の検査施設を探して検査を受けるしかない。これでどうやって社会的に最も弱く、感染リスクが高い人々を守れるのか。この状況が去年の春から全く変わっていないのです」
その上で、最大の課題は、すぐに使える支援のスキームがないことだと嘆く。
「当初、病床や宿泊医療施設をはじめ、介護や福祉施設にも使える緊急包括支援交付金があったのですが、第2波でその予算も底を突いてしまっています。そんなことは、厚生労働官僚であれば誰でも知っている。明日にでも施設の運営、経営そのものが破綻するかもしれないと、胸が張り裂けそうな危機感を抱く事業者の具体的な受け皿が、ここにきて何もない。結局、自力でなんとかしろ、と国に突き放されたとしか思えないのです」
(編集部・中原一歩)
※AERA 2021年1月25日号より抜粋