川栄:「いだてん」の知恵は、楽しく演じていれば大丈夫だったんですけど(笑)、今回の美賀君は喜怒哀楽が激しく、感情のままに動くような人物。台本を読んで「これは大変そうだな」と思いました。所作だったり、せりふも京言葉だったりするので、一から教わりながらやっています。
吉沢亮さん演じる渋沢栄一をはじめ、今回の作品の登場人物はみんな“個”が強い。でも、強さだけではなく、それぞれの葛藤や揺れ動く心情も丁寧に描かれていて、美賀君もいろいろな感情を押し殺しながら徐々に成長していく。そこを自分なりに表現できたらと思っています。
■不安はなかった
——かつてインタビューでアイドル時代について、「歌やダンスにすごく苦手意識があって、苦痛だった」と語ったことがある。一方で、楽しいと感じられたのが「演じること」だった。
川栄:お芝居をやっていると、とにかく楽しくて。私は小さい頃から楽しいと思えることしかやらない子で、自分の感覚に素直なところがあるんです。
アイドルを辞めて俳優一本に絞ることにも、不安はまったくなかったです。「お芝居の仕事がなかったら、違う仕事を探せばいいや」ぐらいの感覚でした。私は運に身を任せるタイプ。自分の強い意志で、というよりは、「どうせ運次第だよな」みたいな感じで生きていて。とはいえ、卒業公演の翌日から舞台の稽古に入ったのは、今振り返ってもかなりハードな経験でした。
——AKB卒業後の初仕事は、1カ月後に開幕した舞台「AZUMI幕末編」。初舞台で初主演という初めてづくしの一歩だった。戦国時代に刺客として育てられた少女あずみの物語で、かつて映画版では上戸彩が、舞台版では黒木メイサが主人公を演じた。