愛知県内の会社員女性(28)は2020年12月中旬、新型コロナウイルスの陽性が判明し、自宅療養になった。ぜんそくの基礎疾患があるからか症状は悪化。熱はすぐに38度以上になった。呼吸も苦しい。
1日目、保健所の職員が「症状どうですか」と電話をくれた。「しんどいです」「呼吸が苦しい」と伝えたが、職員は「若いから大丈夫ですよ。ぜんそくが悪化したんでしょう」と言うのみだった。2日目、女性は「これまで付き合ってきた疾患だからわかるんです。これはぜんそくではない」「せめてぜんそく用の薬を処方して」と訴えたが、職員から「公共交通機関を使わず、病院まで来られたら」と無理な条件を提示された。3日目、貸し出された機器で測定した血中の酸素量が危険な値まで下がった。「数値が下がりました。入院させてください」と訴えたが、職員は「まだしゃべれるなら大丈夫ですよ」。4日目、意識がもうろうとし始めた。「死ぬってこういうことなのかな」と、訴える気力もなかった。同居人が「もう許せない」と心配と怒りで交渉し、やっと入院できたが、症状はかなり悪化していた。
12月中旬といえば「Go To トラベル」の停止がようやく決まった時期。この間、コロナ医療の最前線では、こうした“崩壊”が始まっていた。中国地方の県庁所在地に住むフリーランスの50代女性が語る。
「微熱があるので県のコールセンターに電話すると、『かかりつけ医に診てもらい様子を見てください』と繰り返すのみ。『かかりつけ医がいない』と言っても、『こちらでは紹介できない』と、冷たくあしらわれました」
コールセンターとは「受診(発熱)相談センター」(以下、センター)のこと。コロナ禍初期に各都道府県の保健所などに設置された「帰国者・接触者相談センター」の後身で、昨秋の改名とともに保健所の負担軽減などのため多くの地域で民間業者に業務を委託するようになった。かかりつけ医のいない住民は感染が疑われる場合はここに電話することになっている。スタッフが電話で症状などを聞き取って病院の発熱外来や検査ができる医療機関を案内する仕組みだ。