主演を務めるのは、ヒッチコック、コッポラやタランティーノなど数々の巨匠監督に愛されてきた名優ブルース・ダーン。本作「43年後のアイ・ラヴ・ユー」でカンヌ国際映画祭主演男優賞を史上最年長で受賞。監督は世界が注目するスペイン出身のロセテ。
70歳のクロード(ブルース・ダーン)は妻を亡くし、ロサンゼルス郊外に一人で住む元演劇評論家。近所に住む親友シェーン(ブライアン・コックス)と老後を謳歌していた。
ある日、ひょんなことから今も忘れられない昔の恋人で、人気舞台女優のリリィ(カロリーヌ・シロル)がアルツハイマーを患って施設に入ったことを知る。もう一度リリィに会いたいと強く願ったクロードは、なんとアルツハイマーのフリをして彼女と同じ施設に入居するという一世一代の嘘を思いつく。シェーンの協力のもと、やがて個性豊かな施設の住人との共同生活が始まり、リリィと再会を果たしたクロードだったが、彼女の記憶からクロードは完全に消し去られていた――。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★
最愛の人と一緒にいたくてアルツハイマーを装う。面白い老人映画なのだが、恋に落ちたブルース・ダーンが胡散臭く、違う俳優で見たかったと思ってしまった。愛される昔の人気女優の着るワンピースが可愛くてステキ。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
演劇評論家と舞台女優だった男女を、シェイクスピアの「冬物語」が結びつける。モラルに反する主人公の行動を、コメディータッチでごまかすのではなく、演劇に重ねることで純粋なものに変えてしまう巧みな脚本が心憎い。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
人生の先輩が恋をする話は大好きです。でもこの一本はなんでしょう。思っていたのとちょっと違います。嘘をついてまで近づくのは映画の中でならOK。恋の顛末より、主人公とその友人の関係がお茶目で素敵でした!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★★
ここ数年で一番泣いた映画。高齢の主人公の映画は多くなっているが、今作は最上級の部類。主人公の演劇評論家の設定が、シェイクスピアを随所に効果的に使った展開に生きているし、ブルース・ダーンが絶品の演技を魅せる。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年1月29日号