1月もあと1週間足らず。どうしても書いておきたいことがある。
今から6年前の2015年1月30日のこと。フリージャーナリストの後藤健二さんが殺害されたとされる日だ。同年1月20日にIS(イスラム国)が、後藤氏と湯川遥菜氏を拘束していることを映像で公開。衝撃のニュースだ。後藤氏は前年10月末にシリアでISに拘束され、その後、後藤夫人との間で身代金の交渉が行われていたようだ。
交渉中は相手への刺激は厳禁だ。ところが、翌年1月に当時の安倍晋三総理は、中東を訪問したうえに、17日にエジプトで「イスラム国と闘う周辺各国に2億ドルの支援を行う」という驚くべきスピーチを行った。
20日の映像は安倍氏に激しい怒りをぶつけた。極めつきは、「アベよ、勝ち目のない戦いに参加するというおまえの無謀な決断のために、このナイフはケンジを殺すだけでなく、おまえの国民を、場所を問わずに殺戮する。日本にとっての悪夢が始まるのだ」という言葉だ。ISは安倍氏の演説をISへの宣戦布告と受け取り、ついに30日に後藤氏を処刑した。
最初の映像が流れた時、安倍政権はパニックに陥った。後藤氏らの人質事件を知りながら、中東を訪問し、しかもISに事実上の宣戦布告となるスピーチをした。後藤氏が処刑されれば、厳しい批判は避けられない。
そこで、安倍政権は、ただちに言論統制を敷く。テレビでは、本件で安倍批判をするコメンテーターを排除。メインキャスターたちには、「安倍総理がテロと闘っている今、安倍批判はテロリストを利するだけ」と言わせて、安倍批判を封印した。そのマスコミ統制の先頭に立ったのが、当時の菅義偉官房長官だった。
本件には二つの問題があった。先の大戦時同様、日本のマスコミが大政翼賛会状態になってしまったこと。そして、安倍氏のエジプトでの発言で、ISなどの反米イスラム勢力を日本の敵にしてしまうことだ。これは日本国民の気持ちとは違う。