急な下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)。患者数は国民の1〜2割と言われ、年代別では20〜30代が多く、70代もかかりやすい病気だ。さくらライフクリニック院長の松枝啓医師に、病気の特徴や治療の現在について聞いた。

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 現代社会は、IBSをはじめとする機能性の消化管障害が増えています。その理由は【1】ストレス社会になったこと、【2】肉体労働が減り、からだを動かさなくなったことで、自律神経のアンバランスが起きるようになったこと、【3】時間的な余裕が生まれ、自分自身に関心を持つことで病状を自覚し、過剰に注意を払うようになったこと――にあります。

 IBSを専門的に治療できる医師の数はまだ多くありません。IBSの患者さんは病気の知識が豊富な人も多く、本気で診てくれる医師に巡り合えず、ドクターショッピング(次々に病院を変えること)に陥ることもあります。

 薬物では、下痢型の患者さんにはイリボーがよく効きます。便秘型にも、慢性便秘型の治療薬であるアミティーザが使える可能性が出てくるなど、薬物治療は進歩しています。しかしIBSはそもそも薬だけで治る病気ではありません。運動や生活習慣の改善、食事療法など、段階的に治療していくことが重要です。

 患者さんには「75点主義」をお勧めします。几帳面に100点を取ろうと思わなくていい。本人は75点のつもりでも、まわりからは100点に見えるはずです。

 IBSは苦しい病気ですが、私はむしろ「IBSと言われたら喜んでいい」と患者さんに話しています。この病気になるのは、他人の気持ちがわかる感受性豊かな人である証拠です。プラス思考で捉えて、上手に病気と付き合えるようになることが大切です。

週刊朝日 2013年4月12日号