腹部を30~40センチ切開する開腹手術に比べて、0・5~2センチ程度の穴を腹部に数カ所開けて操作するロボット手術は、回復が早く患者の負担が軽いというメリットもある。
ただし、腫瘍の大きさが7センチを超えるとダビンチは保険適用から外れる。そのため、開腹もしくは腹腔鏡で手術を実施することになる。
■ラジオ波焼灼術や凍結療法も選択肢
腎がんは、ほかの多くのがんと同様に高齢者に多く、たとえ早期でも全身麻酔が必要な手術に耐えられない場合がある。また、ほかに重篤な病気があって手術が困難な場合もある。
こうした場合に選択肢の一つとなるのが、「監視療法」だ。腎がんは比較的進行がゆるやかなことから、定期的に経過を観察する監視療法で手術を回避する。
また、がんが4センチ以下の場合、局所麻酔でできる「凍結療法」や「ラジオ波焼灼術」といった選択肢もある。どちらもCTあるいはMRIで確認しながら皮膚の上から専用の針を差し込む。凍結療法は、専用の針でがん細胞を凍結し、死滅させる治療で、ラジオ波焼灼術は、電極針で腫瘍組織を焼き固める。
治療成績は同等だが、凍結療法は保険が適用されているのに対し、ラジオ波焼灼術は自費診療となるため、現在は実施されるケースは少ない。本郷医師はこう話す。
「凍結療法の利点は、繰り返し治療できること。遺伝性腎がんでがんが多発する人にも有効な選択肢になります。またすでに腎臓が一つしかなく、残った腎臓をできるだけ温存したい場合にも選択肢になります」
凍結療法の難点は、再発率が手術よりも高くなるというデータがあることだ。
「しかし最近は、4センチ以下の腫瘍であれば、再発率は手術と変わらないという報告も出てきています。凍結療法は歴史が浅く、部分切除との大規模な比較試験のデータが不十分な面もあるのです」(本郷医師)
治療による傷は、直径1ミリ程度の針を刺した部分だけで、治療後の痛みはほとんどない。
凍結療法は11年に保険適用されてから、徐々に導入する病院が増えてきてはいるが、どこでも受けられる治療ではない。手術が受けられない場合の選択肢の一つとして知っておきたい。
腎がん手術については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/
(文・中寺暁子)
※週刊朝日 2021年2月5日号