AERA 2021年2月1日号より
AERA 2021年2月1日号より

<分かりやすく、シニアの僕でも楽勝>
<消費者の側に立ってたくさんのサービス改善策を採用していて使いやすい>

 アプリストアで三井住友銀行アプリのレビューを開くと、デザイン性や機能性の高さを評価する声があふれる。同行リテールIT戦略部の江藤敏宏部長は、

「これまでややもすると銀行ファーストで作られることもあったが、お客様視点で作っていくという進め方を取り入れました」

 と説明する。フィンテック企業の参入や国を挙げたキャッシュレス化の波に後れを取るわけにはいかないと、インターネットバンキングのスマホ最適化を進めてはいたが、思うようなプロダクトを作ることができない。苦戦しながらたどり着いたのは、行内でのデザイナー採用だった。

「最初にデザイナーに投げかけたのは何がほしいの?ということでした。Windowsパソコンしかない状況で、僕たちには何が必要なのかもわからなかったんです」(江藤さん)

 Macの他に、アドビのイラストレーターやフォトショップなど一式を取りそろえ、アプリの大幅リニューアルに舵を切った。UXデザイナーとしてアプリに携わった堀祐子さんは、かつてワーキングホリデーで訪れたオーストラリアの銀行での体験が忘れられない。

「スマホでお金を引き落とせたり、電話番号で送金できたり、日本とは雲泥の差でした。過剰なボタン配置はなく、使いやすい。こんなにいいものがどうしたらできるのかと思ったら、銀行の中にデザイナーがいることがわかったんです」(堀さん)

 帰国後、三井住友銀行がデザイナーを募集していることを知り、17年に入行。プロジェクトメンバーたちは、UIやUXが大事だと認識しているものの、具体的にどう関わればいいのかを体感できておらず、デザイナーはいわば「得体のしれない存在」だったが、時間をかけて絵で説明するなどした。結果的にリニューアルしたアプリは、グッドデザイン賞という形でも評価を受けた。

コロナ禍の「デザイン」

 長期化するコロナ禍でもデザインの在り方が問われている。

 ウェブサイトのUX改善などを手掛けるカイゼンプラットフォーム社長の須藤憲司さんは、デザインの重要性をこう語る。

「BtoBもBtoCも非対面営業となり、オンラインでお客さんと会話しなければいけない。ユーザーや消費者との接点をいかにDX(デジタルトランスフォーメーション)化して、自分たちが伝えたい物語をわかりやすく伝えるかが事業の成功につながります」

(編集部・福井しほ)

AERA 2021年2月1日号より抜粋

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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