東京地裁は3月29日、競売にかけられた朝鮮総連中央本部を45億1900万円という最高価格で“電撃落札”した宗教法人・最福寺(鹿児島県)への売却を許可する決定を下した。

 最福寺は護摩木をたいた火柱の前で経を唱える護摩行で知られ、鳩山由紀夫元首相(66)、元プロ野球選手の清原和博氏(45)、金本知憲氏(44)らも訪れた。そして法主の池口恵観(えかん)氏(76)は安倍晋三首相の“陰の指南役”ともいわれる永田町の“怪僧”だけに、今回の落札はさまざまな臆測を呼んでいる。

 経営破綻した在日朝鮮人系信用組合から不良債権を引き継いだ整理回収機構が起こした訴訟で、このうち約627億円の債務の返済を総連に命じた判決が2007年に確定した。しかし、支払い能力がなかったため、紆余曲折の末、総連本部が競売にかけられたのだ。過去に5回、北朝鮮を訪れた恵観氏は落札の経緯を週刊朝日にこう語った。

「訪朝のたび、上層部から『総連は大使館だと思っている。いい形で残せるように、あなたの力で日本政府に話してくれないか』と頼まれてました。移転先が見つかるまでは土地、ビルは貸すつもりです。北朝鮮への制裁一辺倒では拉致問題は解決しない。この落札が日朝交渉の“針の穴”になればと思います」

 だが、公安関係者はこう首を傾げる。

「総連の許宗萬議長と民主党政権は債務問題について裏で交渉をしていたが、昨年末の政権交代でご破算になった。すると突然、恵観氏が出てきた。45億円もの大金をどうやって集めたのか? 総連にビルを貸す代わりに北のしかるべき人間と会わせろ、という交渉に今後、なるのか……。安倍首相の意向が今回、どこまで働いていたのか、興味を持っています」

 しかし、恵観氏は安倍首相との関わりを否定する。「安倍さんとは長いおつきあいですが、昨年末に首相になられてからはお会いしていない。相談も一切してません。45億円はこれからファンドを組んで集める予定です」。

週刊朝日 2013年4月12日号