映画タイトルであり、原作漫画のタイトルに含まれている「さんかく」。これは、主人公の名前・三角(みかど)に由来している。三角は、自らの肉体に、他の霊能力者に「侵入」させることによって、「よりくっきりと霊を見る力」、つまり「見える力」を共有させる。「さんかくの窓」は、三角康介によって開かれる新しい風景、のことだろう。
映画ポスターでは、三角役の志尊淳、冷川役の岡田将生、そして死霊使いの非浦英莉可(ひうら・えりか)役の平手友梨奈が、象徴的な三角形の光の境界の内側にいる。この光る三角形は、冷川が発動させる「結界」(霊的な存在や他者から身を守るための領域)が具現化されたものである。冷川たちは、この三角形の結界の内側で、自分たちの戦いを繰り広げていくわけだが、同時にこの「さんかく」は、「彼らを縛るもの」の正体をみせる空間にもなりうる。
映画では、この「さんかく」の描写や設定も、漫画とは少し違う視点で描かれており、この点を比較することも、映画と原作漫画を楽しむ要素となるだろう。冷川が「私を助けてくれるに違いないと一目見て確信」したというミカドが、この「さんかく」の中で開眼させていく「自己」を、美しく恐ろしい映像を通して見ることができる。
◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。