公開中の映画『さんかく窓の外側は夜』は、ヤマシタトモコ氏によって『MAGAZINE BE BOY』で2021年1月号(2020年12月7日発売)まで連載された漫画が原作になっている。最終巻の発売を2021年3月に控えて、これまでの発行部数は130万部。「霊能力」と「除霊」「呪術」がキーワードの人気ミステリー作品である。映画では「除霊」を通してさまざまな人間模様が交錯する謎解きが描かれるが、原作ではセクシャルな暗喩を含む描写も多い。なぜ除霊に、男同士の“性的快感”の表現が多く用いられているのか。その意味を考えると、物語の深みがより理解できるようになる。
(以下の本文には、映画と漫画原作のネタバレが含まれます)
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■さまざまな霊能力者たち
漫画『さんかく窓の外側は夜』の主人公の三角康介(みかど・こうすけ)は、幼い頃から「日常的に霊を目撃してしまう」という、悩みを抱えている。彼の「能力」は、「悪霊・死霊を見ることができる」だけで、その霊を浄化したり、救済したりする力は持っていない。ただただ、霊を見つけてしまうだけである。そのため、三角康介(※以下、ミカドと表記)は、いつも霊におびえ、霊から目をそらし、「普通の人間」になりたいと願っている。
そんなミカドのもとに、ある日、除霊師・冷川理人(ひやかわ・りひと)があらわれる。冷川は、ミカドに会ったその瞬間に、ミカドの肉体を「使う」かたちで、除霊を行ってみせる。「霊を見ること」しかできないミカドと違って、冷川は「霊の声を聞くこと」「霊に命令すること」「除霊すること」など、さまざまな能力を持っている。
そして、冷川はミカドの体に、自らの体の一部を「侵入させる」ことによって、ミカドの「霊を見る力」を取り込み、除霊の際の力を増幅させることができるのだ。
■主人公・三角康介と除霊師・冷川理人の除霊方法とは?
冷川理人の除霊方法は「霊的なモノをつかんでぶん投げる能力」だと記されている。冷川ひとりでも除霊を行うことはできるが、ミカドの力を借りることによって、冷川の霊力は増大され、除霊によってかかる自らの肉体への負荷や危険を軽減することができるという設定だ。