発足直後に65%あった内閣支持率は、先月には33%にまで急落(朝日新聞調べ)。緊急事態宣言下で銀座のクラブをはしごしていた与党議員たちの不祥事も、国民の反発を招いている。さらに1カ月も緊急事態宣言を延長して国民に負担を強いる状況では、菅首相の態度が“変化”するのも無理はない。

 江田氏はこう語る。

「(首相は)追い詰められてきている。今回の変化も『殊勝さを出さないといかん』という判断があったのでしょう。緊急事態宣言も、これで最後にしなければならず、失敗したら後がない。そうした危機意識は感じているのだと思います。あと、問題は発言の中身です。国民は実効性のある政策を期待している。あの会見でも、具体的な政策やメッセージをもっと聞きたかった。例えば飲食店への事業者支援は1店舗あたり1日6万円の一律支給ではなく、実態に応じた支援をするべきです。休業する飲食店も、あの会見を聞いて、『もうひと月我慢しよう』という気持ちにはなれないはずです」

 スピーチの専門家の目にはどう映ったのだろうか。政治家の演説指導などを請け負うスピーチコンサルタントの阿部恵さんは次のように話す。

「プロンプターを使い始めたことには驚きました。用意していた原稿を読みあげる、という点では変わりませんが、手元を見ずに話せるので、印象は大きく違います。声も大きく出るようになりましたし、お辞儀の角度も、おわびに一番ふさわしいとされる45度の角度でした。どなたかが、見せ方について考えた方がいいという助言をしたのだと思います」

 とはいえ、まだ言葉自体にはエネルギーが感じられないという。

「雄弁である必要はないので、心の底から出てくるような、気持ちを乗せた言葉や強いメッセージを聞きたかったです。先日の蓮舫さんの追及に対して『失礼じゃないか』と応酬していましたが、あの発言は、ご自身の本当の感情だったと思います。会見でも、感情を乗せて話してほしいですね」

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「厳しい質問を抑える姿勢は変わっていない」