ついに菅義偉首相が“変わり”始めたかもしれない。これまでの答弁は目線を落として官僚が作ったペーパーを読み上げるだけだったが、2日の緊急事態宣言延長の会見では、顔を上げ、感情を込めながら言葉を発するようになった。コロナ対応で後がなくなり、「鉄仮面」を脱ぎ捨てる決意をしたのか。はたまた、周囲の振り付け役に従っただけなのか。答弁姿勢を追求してきた野党議員と専門家はどうみたのか。
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2日の会見に臨んだ菅首相は、いつもの会見とは少しばかり様子が違っていた。プロンプターを使用したことで手元の原稿を見る回数が減り、目線は正面に。自民党議員による「深夜に及ぶ会食」を謝罪する際には、深々とお辞儀をする場面もあった。
過去、菅首相の会見や答弁には「言葉に感情がこもっていない」「棒読みで心に響いてこない」などの指摘があり、本サイトも「なぜ菅首相の言葉は“響かない”のか 表情、話し方、しぐさ…過去の首相との『決定的な違い』」と記事にした。国会でも同様の指摘はあり、1月27日の参院予算委員会では、立憲民主党の蓮舫参院議員が「そんな答弁だから言葉が伝わらないんです」と強く迫ると、菅首相が「失礼じゃないでしょうか」と色をなすこともあった。
その2日前、25日の予算委員会でも立憲民主党の江田憲司衆院議員が「首相、紙見て答弁するの、やめませんか。官僚が作成した答弁書読んでも国民に伝わりません。ご自身の言葉で答弁されませんか」と質問していた。その江田氏は、2日の会見をどう感じたのか。
「一応の努力は感じました。『あらゆる方策を尽くす』など強い言葉を使っていたのは、菅さんらしくないなと思いましたが……。私の提言も、多少は気にしていただいたのかなと思いますし、姿勢が変わったのは良いことだと思います」
野党である江田氏にも、首相の変化は伝わっていたようだ。だが、こうも指摘する。
「(話し方は)あれが限度でしょう。柄にもないことをやったら、別の意味で国民の見方が変わってしまう。人間にはそれぞれ持ち味があり、菅さんは地味で朴訥だけれど、実直だという良さがあります。なにも、小泉純一郎元首相のようなパフォーマンスをしてほしいわけではありません。菅さんの持ち味を発揮してもらうためには、たどたどしくても、自分の言葉で話してほしいと思います」