1995年12月8日に起きた高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故。旧動燃(動力炉・核燃料開発事業団=現・日本原子力研究開発機構)の総務部次長だった西村成生(しげお)氏が残した「西村ファイル」には、当時の「もんじゅ」の幹部らによる隠蔽工作が記載されていた。ジャーナリストの今西憲之氏と週刊朝日取材班が検証した。
西村氏による内部調査の聴取記録には、驚くべき新事実が含まれていた。事故翌日の12月9日の午前2時に職員が現場に立ち入った際、ビデオのほかにポラロイド写真も撮影していた。
当時の報道では、現場の職員が「写真は煙ばかりでよくわからなかったので捨てた」と説明している。漏れ出したナトリウムが煙状に広がり、何も写っていなかったのだという。
ところが、である。当時の「もんじゅ」技術課長の聴取記録に、まったく違うことが書かれていたのだ。〈県の調査の前に副所長はポラロイド写真をシュレッダーにかけさせていた。2時のポラロイドは後で強引に出させて見たがチャントうつっていた〉
なんと、写真は実はきちんと写っていたのだ。それを、S副所長の指示でシュレッダーにかけたという。新たに重大な「隠蔽」が発覚したというのに、その後、この問題について調査された形跡はなく、97年7月にようやくまとめられた動燃の調査報告書でも、一言も触れられていない。
見過ごせない問題はまだある。事故当時の「もんじゅ」のプラント2課長への聴取によると、最初に事故現場に入る前に、S副所長とこんなやり取りをしたという。
〈消防には入らせないようにしようということになった。(中略)何とか動燃だけ入って消防を入れさせないようにするため、入り口付近を覗くだけだし、消防は防護具やその使い方を知らないので不慣れであるから動燃だけ入れさせてくれと自身で消防に要望した〉
ナトリウムが燃焼する火災まで起きていたというのに、消防にまで「隠蔽」したのだ。
※週刊朝日 2013年4月19日号