“青学史上最強ランナー”と言われる出岐雄大(青山学院大、2013年卒)も、卒業後に伸び悩んだ一人だ。高校途中までサッカー部だった男は、大学入学後に原晋監督の指導の下で急成長を遂げ、2年時に2区で11人抜き、3年時にも2区で9人抜きの力走を見せた。4年時の出雲駅伝では初優勝に貢献するなど青学黄金期の礎を築いた。また、3年時の2012年3月には初のフルマラソンに挑戦し、当時の学生歴代3位となる2時間10分02秒の好タイムでゴールし、多くの陸上ファンに「将来の五輪メダル」を期待させた。だが、卒業後に中国電力に入社して以降は「陸上に強い思いがなかった」、「箱根以上の目標が見つけられない」とモチベーション低下に悩み、「中途半端な気持ちで続けては会社に失礼」と2016年に25歳の若さで引退した。

 箱根のエースたちが伸び悩み、「箱根の弊害」を指摘する声が再び多く聞かれるようになってきた頃に現れたのが、大迫傑(早稲田大、2014年卒)だった。佐久長聖高時代から数々の記録を作り、大学でも1年時から1区区間賞で総合優勝の原動力になるなど、スーパールーキーとして活躍。同時に卒業後を見据えたトレーニングも積み、日清食品グループ所属を経て渡米し、プロランナーとして活動。トラックで2013年、15年の世界陸上、16年のリオデジャネイロ五輪に出場した後、2017年からは本格的にフルマラソンに参戦。同年4月のボストンマラソン、12月の福岡国際マラソンでともに3位の好成績を収めると、翌2018年10月のシカゴマラソンで2時間5分50秒の日本記録を樹立。日本長距離界のエースの座に君臨し、2020年3月の東京マラソンでは日本記録を再更新する2時間5分29秒の激走を見せ、東京五輪の日本代表切符を手にした。

 大学卒業後に飛躍した箱根のエースは大迫だけではない。同学年の設楽悠太(東洋大、2014年卒)に加え、井上大仁(山梨学院大、2015年卒)、中村匠吾(駒沢大、2015年卒)、服部勇馬(東洋大、2016年卒)らも学生時代の経験をプラスに変えて卒業後も活躍。箱根で2年連続総合優勝の原動力となった設楽は、2015年の世界陸上に1万メートルで出場し、2018年2月の東京マラソンでは、当時の日本記録を更新する2時間06分11秒で走破している。

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今後も箱根のエースが卒業後に活躍?