血液がんの一つ、多発性骨髄腫は平均生存期間3年の病。この病気の治療では、病期や年齢で治療方針が変わる。その人にとって最善の治療を受けるためのポイントについて、がん研有明病院血液腫瘍科部長の畠清彦医師に聞いた。

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 多発性骨髄腫は、血液検査の結果などからI期〜III期に分類されます。痛みや貧血などの病状がなく、臓器障害がみられない場合は、積極的な治療はせず、経過観察をしていきます。

 治療では、薬物療法とともに大きな柱となっているのが、自家末梢血幹細胞移植です。薬物療法の後、患者さん自身の造血幹細胞(赤血球や白血球などの元になる細胞)を採取。抗がん剤のメルファランを使った大量化学療法でがんの量を減らしてから、造血幹細胞を体内に戻すという治療です。寛解(かんかい)をもたらし、再発を遅らせる効果などが期待されています。

 移植ができる条件は、65歳未満で、かつ健康状態(心肺機能)が良好な患者さんですが、年齢が問題で実際に移植できるケースはそれほど多くありません。

 薬物療法では、分子標的薬の3剤が使えるようになり、治療成績が大幅に向上しましたが、しっかり効かせるためには、規定の量を十分に使うことが大切です。

 とくに高齢の患者さんでは、糖尿病や腎臓病、肝臓病など何かしら持病を抱えている人が少なくありません。薬やセルフケアで持病が管理できていれば、薬の投与量を減らしたり、投与期間をふつうより長く空けたりしなくてもすむので、かかりつけの医師のもとで、治療を受けておいてください。当然ながら、食事や睡眠をきちんととって、病気や治療と闘う体力をつけることも大切です。

 多発性骨髄腫の治療は患者さんの協力が不可欠です。正しい情報と知識を医師と共有しながら、二人三脚で治療に臨んで下さい。

週刊朝日 2013年4月19日号