夫婦で話し合いをせず、一方的に子どもを連れて家を出てしまう親は少なからずいる。DVなど深刻な事態から避難する場合だけでなく、別居して一定期間子どもと暮らすことで離婚時の親権獲得を有利にしようと、子どもを「連れ去る」ケースもある。連れ去られた側は、いきなり子どもと引き離され、その後もなかなか子どもに会わせてもらえないなど苦しむことも多い。
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一方、連れ去った側はどうか。DVやモラハラがないとすれば、片方の親と子どもを引き離してまで、家から逃れたい事情とは何なのか。「連れ去り」をめぐる背景には、どんな夫婦のすれ違いがあるのだろうか。両者の言い分を聞いてみた。
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今回取材に応じてくれたのは、深澤さん夫婦。会社員の尚之さん(仮名、34歳)と、その妻で専業主婦のたまきさん(仮名、38歳)の間には、4歳の男の子がいる。いまは尚之さんが子どもと一緒に暮らし、たまきさんが別居している。
こう書くと、尚之さんが連れ去った側のようだが、そうではない。たまきさんが計画した「連れ去り」を尚之さんが阻止し、子の監護権を得て別居しているという、少々複雑な事情がある。
これまでの経緯を時系列で整理してみる。
2015年 結婚
2016年 長男誕生
2019年4月 転勤で、家族で関西地方に転居
2019年8月 妻が「連れ去り」を計画、実行するが途中で断念
2019年10月 妻が2度目の「連れ去り」をしようとするも、事前に夫が保育園、警察と児童相談所に相談していたために阻止。子どもは児童養護施設で一時保護された。妻と夫は別居。調停の結果、夫が監護権者として指定される
2019年3月 子どもが児童養護施設から家庭復帰。監護権者である夫が引き取る
2019年4月 転勤で、父子で東京に転居。同時に妻も東京に転居。父子と妻は別居。妻は子どもと週3回ほど面会交流
まずは、尚之さんの話から聞こう。
「妻と知り合ったのは、いわゆる合コンです。容姿は華やかだし、会話もウイットに富んでいて知的。とてもすてきな女性でした」