国内外で人気を博している『Re:ゼロから始める異世界生活』。大ヒットへの道のりには、小説投稿サイト「小説家になろう」の存在が欠かせない。作者の長月達平さんが、サイトのメリットや人気作家になるまでの軌跡などをAERA 2021年2月22日号で語る。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』の作者、長月達平さんは、「小説家になろう」への投稿からわずか数年で、現代を代表する人気作家へと上り詰めた。その軌跡は、「なろう系小説」の活性化と重なる。
■投稿開始は2012年
小説を書き始めたのは中学2~3年のときでした。新人賞とかに投稿をしたりしたんですけど、全然だめでしたね。一時休んで、大学生の頃にまた新人賞に投稿を始めるんですけど、まったく鳴かず飛ばずで……。
大学卒業から社会人になったくらいに、「小説家になろう」って名前をぽつぽつと聞き始めて。読んでみたら、すごく面白い作品がいっぱいあって、また自分でも書いてみたいなと思うようになりました。
ネット小説って、新人賞投稿などに比べても桁違いにたくさんの人に読んでもらえて、感想や評価がもらえる。その中で人気になるってことは、面白いってことじゃないですか。だから、「なろう」はこの先、来るんじゃないかと思ってそこで書くことにしたんです。
とはいえ、それも善し悪しはありますね。最初、感想を書いてくれる人が少ない頃はいい感想が多いんですよ。でも人数が増えてくると悪い評価の感想も出てくる。やっぱり人間って悪いものが目についてしまって、すごい悪い感想もらっちゃったなぁって気持ちになりました。
■感想が「水と肥料」に
でも、最初のころに感想を書いてくれた人は、今でも名前を覚えています。やっぱり初めて書いた小説を初めて評価してくれた人なのでその人を喜ばせたい!って気持ちになりました。
言ってみれば、水と肥料をいただいているようなものです。担当の編集さんひとりが水と肥料をくれるよりも、100人が水と肥料をくれたほうが伸びる量も多い。書籍化するときは、そのあちこち伸びた枝を編集さんに整えてもらうという感じです。最初のころに水と肥料を与えられてなかったら俺は枯れ果てていたと思います。