当然ながら、コロナの話題は多くの国民にとって関心度が高いテーマであるため、どんな形でも報じればある程度の数字が見込める。どちらかと言うと不安を煽(あお)るような情報を拡散した方が、数字を取りやすいというのも事実だろう。

 だが、そんなコロナ禍での生活もすでに丸一年近く続いている。国民の間でもそろそろ自粛疲れがピークに達しているのではないか。自粛を強いられるストレスに加えて、コロナ関連の情報がメディアから絶えず流れてくることにうんざりしている人も増えているかもしれない。

 多くの医療専門家が指摘する通り、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、私たちができる特別なことは何もない。不要な外出を控え、外出時はマスクを着用し、人との距離を保ち、帰宅時は手洗をする。感染拡大当初から言われていた当たり前のことを淡々と続けることが、何よりの対策になる。

 マスコミが本当に報道すべき情報はそれに尽きる。それ以上の不安を煽ったり、対立を深めたりするような報道には社会的な意義はなく、悪影響の方が大きい場合もある。

 そんな状況下で、TBSが朝の情報番組をバラエティ路線に切り替えるというのは、大胆ではあるが賢明な判断だと思う。番組が成功するかどうかはわからないが、少なくとも慢性的なコロナ疲れに悩まされている視聴者にとっては、一服の清涼剤となるかもしれない。

 コロナ時代の先を見すえたTBSの決断が、吉と出るか凶と出るか。その行く末を見守っていきたい。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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