ライブの様子(写真提供:ビクターエンタテインメント)
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『あめりか Hosono Haruomi Live in US 2019』のジャケット(写真提供:ビクターエンタテインメント)
『あめりか Hosono Haruomi Live in US 2019』のジャケット(写真提供:ビクターエンタテインメント)

 日本の音楽の過去と現在を語る上でも、そしてアメリカの音楽の歴史、日本とのつながりを解き明かす上でも、非常に重要なアルバムがリリースされた。

【写真】『あめりか Hosono Haruomi Live in US 2019』のジャケット

 細野晴臣のライブ・アルバム『あめりか Hosono Haruomi Live in US 2019』。全18曲は2019年7月にアメリカ・ロサンゼルスでのパフォーマンスを収めたものだ。もちろんまだコロナ前のこと。これに先駆けて同年5月に開催されたニューヨーク公演を含めてチケットは早々にソールドアウトし、海外の音楽メディアもライブリポートを写真付きで大きく報じていた。

 細野にとってソロ名義では初となるライブ・アルバムだ。そのアルバムが、US公演の模様を収めた1枚であることは実に象徴的だ。坂本龍一、高橋幸宏と組んだYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)時代に海外ツアーを成功させている細野だが、もともとアメリカのフォークやロックの影響を受けて音楽活動を開始したことは知られている。エイプリル・フール~はっぴいえんどといった日本のロックの原点にあたるようなバンドでの活動を経て、ソロに転じた70年代にはアメリカ南部の素朴な音楽と、沖縄やアジアの音楽などをミックスさせたユニークな作品(「泰安洋行」など)を数多く発表。今も人気の高い“トロピカル三部作”である。

 2000年代前後からは、さらに原点に立ち返るかのように20世紀初頭のアメリカの大衆音楽を独自にカバーする機会を増やし、アルバムではそれらの曲を自ら積極的に歌ってきた。つまり、細野晴臣にとってアメリカの大衆音楽は若い頃から現在に至るまで最も身近な存在であり続けてきたのだ。

 低く穏やかなトーンの歌声と、それに寄り添うような滑らかなベースプレー、どこか愛嬌のある曲調は、世代のみならず国境をも超えた。もともと細野作品の海外人気は高かったが、2010年代以降には、アメリカの音楽レーベル「ライト・イン・ジ・アティック」から、はっぴいえんど時代を含めた細野ナンバーも収録する日本の音楽のオムニバスアルバムがリリースされた。また、日本の1960~70年代のフォーク/ロックのオムニバスが発売されたのを始め、一連のソロ作品もリイシュー(再発売)された。アメリカでの再評価に先鞭をつける格好となったのは間違いない。

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