10代最後にしか出せない力で未来を創ろう(イラスト:サヲリブラウン)
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 作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。

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 受験シーズン真っ只中。受験生のお子さんをお持ちの親御さん、今日もお疲れ様です。

 さて、人生に大きな後悔はないものの、過去の自分にアドバイスができるならば、私は高校時代の自分に一言申したい。「あんた、とにかくちゃんと勉強しなさい!」と。

 ことの重要性を理解していない私の肩をつかみ、椅子に座らせてこう言うのです。家庭教師や塾の月謝、教材、大学受験に掛かる諸々の費用、結構な額になっているわよ!

 高校生の私にとってはショッキングかもしれませんが、のちに母親が病気になることも伝えなければ。そうしたら、少しは頑張るかもしれないし。

 そうそう、だからお手伝いもちゃんとやってね。高校生の私よ、スーパーには一緒に行って母の荷物をもってやれ! 食後の片づけも毎晩!

 ここで頑張るか否かで、のちの人生はたいして変わらないかもしれないけれど、取り返しのつかない後悔のひとつかふたつは解消できるから。

 受験シーズンになると、いつも妄想することです。父親にはまだしも、母親は鬼籍に入ってしまったため、親孝行のしようがない。

 思い返すたびに頭を抱えたくなるほど、不真面目だったのです、受験生の私は。サボることばかり考えて、ちんたらちんたら。受験生とはいえ、お手伝いも不十分でした。

 高校生がこの連載を読むことはほとんどないと思いますが、親は頑張っているんだよ君のために。それは親の仕事だから負い目に感じる必要はないのだけれど、自分の未来を創るのに、これほど誰かが応援してくれる時期も滅多にない。いや、これ以降一度もないかもしれません。

 受験勉強に意味があるとしたら、自己管理能力育成のほかにありません。一定期間わき目も振らずに、自分を集中させられるか。この能力、社会に出てから意外と求められることが多いのです。

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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