【2】相続手続き対策

 相続税の申告・納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に行わなくてはならない(図表7参照)。

「10カ月は長いように思えますが、実際にはあっという間。相続人は相続に不慣れで、何から手をつければいいのか、どこにどんな財産があるのかもよく分からないのが普通です。そのため相続手続きを任された相続人には、大きなプレッシャーがかかります。それが元で相続人同士がもめることも少なくありません」(稲さん)。

 残された相続人が困らないように遺言書の作成のほか、死後事務などある程度の道筋をつけておくことが、先ゆく人の優しさといえる。

【3】相続税対策

 相続税対策は、納税資金の確保と相続税の節税の二つに分けられる。納税資金の確保では、まず遺産となる金融資産で相続税が納付できるかを試算する。不足するようなら、不動産の売却などで補うことを考えよう。
 
 相続税を抑えるには、「相続財産自体を減らす」方法と、「相続税評価額を下げる」方法がある。相続財産を減らす対策としてよく用いられるのが生前贈与だ。

 相続税評価額を下げる対策としては、財産の組み替えがあげられる。現金を不動産に変える、更地にアパートやマンションを建てるなどだ。また、非課税財産への組み替えも有効で、これには生命保険金の非課税枠を利用する。

「争いを防ぐ三つの相続対策は、総合的に進めていく必要がありますが、最優先すべきはあくまでも遺産分割対策です。いくら相続税を減らして、納税資金が確保できても、遺産をめぐって家族がバラバラになってしまっては意味がありませんからね」と、稲熊さんは言う。(文・田中弘美)

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