林:書いてるうちに体が勝手に動いてきて、締め切りがなければすごく楽しいですよ。つらいと思った人は続かないんじゃないですかね。

松重:作家さんは、表に出したくない部分とか、奥にしまっておきたいものを出さなきゃおもしろくならないという覚悟が必要ですよね。

林:でも、小説だとフィクションの顔をしてればいいですからね。エッセーだと「こんなこと考えてるの? イヤらしい」とか言われますけど、フィクションならどんなことでも書けます。それにいまエッセーも“いい人”にならないとたたかれますから、「くちびる寒し」という感じです。

松重:数行だけ切り取ってそこに焦点を当てて悪い解釈をするという遊びが広がっちゃいましたよね。それが作り手を萎縮させておもしろいものがつくれなくなっている。そうやって萎縮しちゃうと、つまらないものを一生懸命つくってるようなものですからね。それじゃ、しょうがない。

林:ほんとそう思います。でも、劇場は最後の砦で、何したっていいと思いますよ。

松重:そうです。それをもうちょっと広げていくにはどうしたらいいか。たとえば本を書くとか、俳優という仕事に還元できる方法を模索しようと思ってるんです。幸いなことに、この本、もうすぐ中国とかでも出されるんですよ。

林:素晴らしいですね。

松重:今、日本以上にどんどん進んでいる韓国や中国の映画界とも、もっと交流したいと思ってるんです。彼らともっと情報交換して、僕ら日本が置いていかれないようにしたほうがいいと思うんですよね。

林:もういろいろお話があるんですか。

松重:「一緒にお仕事やりたいですね」という話はあるし、一昨年は北京国際映画祭にも行って、向こうの俳優さんともお話ができました。向こうの人はありがたいことに日本の映画とか俳優に興味津々なところがありますので、そういう人たちとおもしろいものをつくることが、これからの活路になるんじゃないかと思ってます。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ